新刊「猫になる」より。冒頭部分の抜粋。
銀桂。(銀時×桂、銀時×桂猫、銀猫×桂、銀猫×桂猫)
短篇は、銀時と桂猫の不可思議な邂逅。
SSは、銀猫と桂猫のねこ暮らしなど。
パチンコ屋からの帰り道、黒い猫と遭遇した。
きりっと締まった目つきに澄んだ瞳、長い尾だけが異様にふさふささらさらだ。首輪の代わりに薄い布をスカーフのように捲いている。成人猫というよりは仔猫から少し育った若猫といった感じだ。どこかの飼い猫だろうか。
みゃぁあぁん。
高からず低からずの艶っぽい声でひと啼きして、黒猫は小径沿いの板塀にひらりと飛び乗った。
しなやかなからだ。黒く艶やかな長い尻尾がきれいな流線を描いて銀時の目のまえを横切る。ほとんど無意識に、銀時はその尻尾に手を伸ばしていた。
ふびゃっ。
黒猫が抗議の声を上げた。すんでのところでかわされて、黒い尾っぽは猫のからだに巻き取られ、板塀沿いにすらりと落とされた。
だが逃げもせず、狭い板塀の上に器用につかまったまま、じっと銀時を見つめている。
「なんだ、こいつ」
誘ってるのか。猫のくせに。
どこかのだれかを思わせて、銀時は小鼻を掻いた。
でもちょっと、やっぱりあの尻尾に触りたい。もふもふしてみたい。いや、もふもふじゃなくさらさらか。あいつの髪のように。その手触りを確かめてみたい。
「腹減ってねー? 俺いまから屋台におでん食いに行くとこだけど、付いてくるならはんぺんくらい食わせてやるよ?」
とりあえず食いもので釣ってみる。ことばが通じたわけでもあるまいに、なんとなく意味は伝わったのか黒猫は小首を傾げて見せた。
まいったな。マジ、似てるじゃんこいつ。
そのまま銀時が歩き出すと、たたたっ、といった風情で、だが音もなく黒猫は板塀を駆けて付いてくる。その気配に銀時は、振り返りたいのを抑えて、ただ口許をほころばせた。
つづきはオフ本 2009.09.09.
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パチンコ屋からの帰り道、黒い猫と遭遇した。
きりっと締まった目つきに澄んだ瞳、長い尾だけが異様にふさふささらさらだ。首輪の代わりに薄い布をスカーフのように捲いている。成人猫というよりは仔猫から少し育った若猫といった感じだ。どこかの飼い猫だろうか。
みゃぁあぁん。
高からず低からずの艶っぽい声でひと啼きして、黒猫は小径沿いの板塀にひらりと飛び乗った。
しなやかなからだ。黒く艶やかな長い尻尾がきれいな流線を描いて銀時の目のまえを横切る。ほとんど無意識に、銀時はその尻尾に手を伸ばしていた。
ふびゃっ。
黒猫が抗議の声を上げた。すんでのところでかわされて、黒い尾っぽは猫のからだに巻き取られ、板塀沿いにすらりと落とされた。
だが逃げもせず、狭い板塀の上に器用につかまったまま、じっと銀時を見つめている。
「なんだ、こいつ」
誘ってるのか。猫のくせに。
どこかのだれかを思わせて、銀時は小鼻を掻いた。
でもちょっと、やっぱりあの尻尾に触りたい。もふもふしてみたい。いや、もふもふじゃなくさらさらか。あいつの髪のように。その手触りを確かめてみたい。
「腹減ってねー? 俺いまから屋台におでん食いに行くとこだけど、付いてくるならはんぺんくらい食わせてやるよ?」
とりあえず食いもので釣ってみる。ことばが通じたわけでもあるまいに、なんとなく意味は伝わったのか黒猫は小首を傾げて見せた。
まいったな。マジ、似てるじゃんこいつ。
そのまま銀時が歩き出すと、たたたっ、といった風情で、だが音もなく黒猫は板塀を駆けて付いてくる。その気配に銀時は、振り返りたいのを抑えて、ただ口許をほころばせた。
つづきはオフ本 2009.09.09.
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