「天涯の遊子」沖桂篇。4回に分割。
沖田と桂。銀時、土方、それぞれが個々に絡む。
現在の、現時点推移と、回想が時系列で、同時進行。
紅桜以降、動乱篇まえ。
「旦那は、あるんですかィ?」
「うん? あ、俺、いちごパフェの小倉あんトッピングね。総一郞くん」
行きがかりで銀時とおなじ卓について沖田は、ざっと茶店のメニューに目を通す。
「年少者にたかるんですかィ。俺ぁ、わらびもちセットで」
注文をすませて、話を継いだ。
「身内の死に目に会ったこと」
「まあね、きみより長く生きてるからね。銀さんは。親の死に目は覚えてねーし、親代わりの死に目にも会えなかったけど」
見終えたはずのメニューを手で弄びながら、銀時の目線は遠くにあった。
「いっぱい、失くしたよ。目のまえで」
「…旦那ぁ、戦争経験者でしたっけ」
沖田は、もう知らないといっていい世代だ。ほんの十年余の差の、この隔絶。
「でもまあ、まだいちばん大事なものの死に目には、会わずにすんでるし」
めずらしくものおもう風情で、どこか心許なげだ。
「そりゃ旦那の、いいひとかなんかで?」
「そんな、きれーなもんじゃねーけど」
と、急に気恥ずかしくなったのか、銀時は目のまえに運ばれてきたいちごパフェに逃げ場を求めて、ひと匙すくう。
「ま、その、あれだ。腐れ縁の、ツレ」
「そいつぁ、もしかして。桂のことですかィ」
ぶ、ごほっ。とたんに噎せた銀時に、掛けたヤマがあたったのを沖田は知った。銀時は、思わず、といったふうに沖田を見る。沖田は至極まじめな表情で、揶揄うでもなく見返していた。
「まあ、旦那のツレがだれだろうと、それが旦那のいいひとだろうと、俺ぁべつに気にしやせんが」
「だから、そんなんじゃないから。総一郞くん」
手許の器の、黒蜜きなこのわらびもちを黒文字で器用にすくい取りながら、
「でももしそうなら、やっぱり旦那はわからねぇおひとだ。俺らは、その、敵になるんじゃねぇですかィ。なのに」
沖田は問うた。
「関係ねーよ。真選組も攘夷も、俺には、ない」
開きなおったのか、暗にだれと認めるもの云いをして、再びパフェにとっかかる。
「おめーらにやられるあいつじゃないし。万が一にもおめーらの手に掛かるようなことにでもなれば、まあ二度と奢ってもらおうなんて了見にはならねぇだろうがなぁ」
あずきをたっぷりすくい取って、もぐもぐと咀嚼するさまからは、本心は見えない。だがなんとなく、沖田には伝わった。そんなことにでもなれば、この旦那は。きっと。自分でも自分がどうなるか、わからないのじゃないか。馬鹿強いのは沖田も承知しているが、切れた銀時など、想像だにおよばない。
「んじゃまあ、きょうのところは素直に、奢っておきますよ」
この旦那をして、桂とはそれほどの存在なのか。というか、この旦那だから、なのか。そのあたりは微妙だったが、沖田の関心はいや増す。
しかしその肝心の桂とは、会おうにも、おおむね町中の偶然に期待するしかないのが、現状だ。あとは、潜伏場所か活動場所の手がかりを得て、無駄を覚悟で張るしかない。しかも沖田が望むのは、一対一の対決だ。
だから、その報告に沖田は内心で小躍りした。
監査方の山崎がつかんだ情報を、もっともらしい理由を並べ立て、半ば脅して他には口止めをし、沖田は翌日早々にその場所へと向かった。
攘夷派幹部の会合があるという、江戸から少し離れた難所・権太坂手前の保土ヶ谷の宿。あいにく非番ではなかったが、沖田のさぼりはいまに始まったことではないし、咎め立てするような命知らずもいない。もっとも一番隊の隊士たちも心得たもので、肝心なときにだれよりつよい身方でさえあれば、沖田の存在意義は成り立つと思っているふしがある。
ほかの攘夷派幹部になど沖田はなんの関心もなかったが、仮に桂を逃してもそっちを捕らえれば近藤の顔は立つ、などと都合の良いいいわけを考えて、足を速めた。
保土ヶ谷の宿は、かつて難所を越えるまえの英気を養う休息地として栄えた。天人の世となってからは坂越えなど楽々とすませられるようになったけれど、宿場はいまもそこそこに賑わっているようだ。
入ってすぐの大通りで、沖田は見慣れた後ろ姿をみつけて、がらにもなくどきりとした。黒の着流し。二本差し。めずらしく笠など被って。
「なんで、野郎がいるんでィ」
そういえば、朝屯所をでるときも姿を見なかった。また外泊かと思っていたのだが、ここまで遠出をしてきているところを見ると、非番だったのか。だがなぜここに。理由はすぐに思い当たった。沖田とおなじだ。桂がいるからだ。
山崎から先に聞き出していたのか、独自で調べ上げたのかはわからないが。ひょっとしたら、桂の居場所まで突きとめているのかもしれない。それならそれで手間が省けていいや、と、沖田はぎりぎりの距離をとってあとをつけた。
果たして。土方は大通りをひとつ入った道筋の神社の境内で、歩みを止めた。参道に立ち並んだ木々の本堂にほど近い一本にもたれ、笠を根元へ外し置き、煙草を銜えて一服する。
その木々のいずこからか、姿なく、声だけが降ってきた。沖田はよく聞こえる位置にまで躙り寄る。参道脇の土塀で区切られた一角に身を潜めた。
「どういう了見だ。芋侍」
まちがいない。桂の声だ。
「んなこたぁ、云わずともわかってんだろうが」
「おれは忙しい身なのだが」
「会合の場にまで押しかけようってんじゃねえんだ。こっちは非番だし、だいいちここはお江戸じゃねえ。管轄外だ。顔くらい、見せろや」
どうやら桂を、呼び出すことには成功しているらしい。いつのまに土方は桂とコンタクトをとれる手段までを得ていたのか。
「見せて、どうする」
焦れたらしい土方が、銜えていた煙草を木の幹に押し付け、揉み消した。
「追えと云ったのは、てめぇのほうじゃねぇか。だからこんなところにまで来たんだぜ。そっちだって応じたからには、まんざらその気がねえわけでもねぇんだろ」
「自惚れるなよ。会合まえに面倒を起こしたくないから来てやっただけだ」
「自惚れるだろうが。連絡手段にフリーのアドレス程度は教えてくれてるんだからよ」
かさり、木の葉のこすれる音だけがする。桂は現れない。それにしても土方のやつ、アドレスだって? そいつは近藤さんの領分じゃあねえのかィ?
「アドレス、変えよっかな…」
ぽつりと、だが妙にあどけない、笑いを含んだ声で桂が云った。
「おめぇな。いいかげんにしろよ。時間、あんまりねえんだろ。俺ぁな、ただ」
「ただ?」
「会いてぇんだよ。おめぇの顔が見てえんだ」
ちくしょう、わざわざ云わすんじゃねえよ。そう続けた土方に、沖田は思わず上げそうになった声を、かろうじて飲み込んだ。桂とのあいだになにかあったと推察してはいたが、この成り行きは正直想像を超える。
土方は見てくれが見てくれだから、真選組のなかでは断トツにもてる。もてるが、マヨ好きが禍してそれ以上にはあまり進展するふしがない。だからか、あれでいて存外、初心なんじゃないか。というのが、土方のあずかり知らぬところでの、隊士たち多くの認識だった。しかしまさか、まさか。
沖田も、桂の容姿が人並み外れたものだということは理解しているし、たしかに立っているだけなら佳人だろう。土方の好みは元来、はっきりものを云う芯のつよい清楚な美人のようだから、わからなくもないが。
と、そこまで考えて、沖田はあたまを振った。自分もずいぶん毒されている。だが沖田にとって重要なのは、その容姿より、あくまで桂の腕前であり、その威厳にも似たあのときの威圧感だった。あの腕と勝負したいし、あの威厳に踏み込んでめちゃめちゃに荒らしてやりたい。おのれのサドっ気を沖田は自覚していたから、ともかく、桂をかまい倒したくてしかたがないのだ。でなければ、わざわざこんなところまで、足を伸ばしたりはしなかったろう。
「桂」
もういちど、土方は呼びかけた。聞いたことのないような、脆さを秘めた声音だった。
「…たのむ」
沈黙が落ちた。
かさり、また葉音がして。土方の背後に、ふわり、人影が降り立った。土方の背が、わずかに固まる。ぎこちなく、振り向いた。至近に桂の顔があった。土方はみつめ、そのまま無言で抱きしめた。
「おい」
「だまっとけ」
「顔を見るだけではなかったのか」
「すむかよ。それで」
「話がちがうぞ、土方」
だが、その桂の声は穏やかだった。少なくとも、この位置までは土方はゆるされている。そんな印象を沖田は抱いた。
「ちがわねぇ。こうしたかった」
「ちがう。ひとりで来ると、云っていたではないか」
目顔で促されて、そちらを土方は見た。その光景に目を奪われていた沖田は、桂のことばが示す意味を察するのが遅れた。
土方の、纏う空気の色が変わった。沖田が潜む土塀のほうを睨める。
「だれだ。出てこい」
とっさに、沖田は判断に迷った。ここで姿を見せることは、あとあと土方を揶揄うのにプラスと出るだろうか。そしてなにより桂の目に、おのれの行動はどう映るだろう。
「来やがらねぇんなら、こっちから行くぜ」
無意識の動作で背後に桂を庇いながら、土方が鯉口を切る。
その本気を悟って、沖田は諸手を掲げて、進み出た。ここで衝突したところで、なんの益にもならない。土方が、ぽかんと口を開けるのが見えた。
続 2008.02.03.
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「旦那は、あるんですかィ?」
「うん? あ、俺、いちごパフェの小倉あんトッピングね。総一郞くん」
行きがかりで銀時とおなじ卓について沖田は、ざっと茶店のメニューに目を通す。
「年少者にたかるんですかィ。俺ぁ、わらびもちセットで」
注文をすませて、話を継いだ。
「身内の死に目に会ったこと」
「まあね、きみより長く生きてるからね。銀さんは。親の死に目は覚えてねーし、親代わりの死に目にも会えなかったけど」
見終えたはずのメニューを手で弄びながら、銀時の目線は遠くにあった。
「いっぱい、失くしたよ。目のまえで」
「…旦那ぁ、戦争経験者でしたっけ」
沖田は、もう知らないといっていい世代だ。ほんの十年余の差の、この隔絶。
「でもまあ、まだいちばん大事なものの死に目には、会わずにすんでるし」
めずらしくものおもう風情で、どこか心許なげだ。
「そりゃ旦那の、いいひとかなんかで?」
「そんな、きれーなもんじゃねーけど」
と、急に気恥ずかしくなったのか、銀時は目のまえに運ばれてきたいちごパフェに逃げ場を求めて、ひと匙すくう。
「ま、その、あれだ。腐れ縁の、ツレ」
「そいつぁ、もしかして。桂のことですかィ」
ぶ、ごほっ。とたんに噎せた銀時に、掛けたヤマがあたったのを沖田は知った。銀時は、思わず、といったふうに沖田を見る。沖田は至極まじめな表情で、揶揄うでもなく見返していた。
「まあ、旦那のツレがだれだろうと、それが旦那のいいひとだろうと、俺ぁべつに気にしやせんが」
「だから、そんなんじゃないから。総一郞くん」
手許の器の、黒蜜きなこのわらびもちを黒文字で器用にすくい取りながら、
「でももしそうなら、やっぱり旦那はわからねぇおひとだ。俺らは、その、敵になるんじゃねぇですかィ。なのに」
沖田は問うた。
「関係ねーよ。真選組も攘夷も、俺には、ない」
開きなおったのか、暗にだれと認めるもの云いをして、再びパフェにとっかかる。
「おめーらにやられるあいつじゃないし。万が一にもおめーらの手に掛かるようなことにでもなれば、まあ二度と奢ってもらおうなんて了見にはならねぇだろうがなぁ」
あずきをたっぷりすくい取って、もぐもぐと咀嚼するさまからは、本心は見えない。だがなんとなく、沖田には伝わった。そんなことにでもなれば、この旦那は。きっと。自分でも自分がどうなるか、わからないのじゃないか。馬鹿強いのは沖田も承知しているが、切れた銀時など、想像だにおよばない。
「んじゃまあ、きょうのところは素直に、奢っておきますよ」
この旦那をして、桂とはそれほどの存在なのか。というか、この旦那だから、なのか。そのあたりは微妙だったが、沖田の関心はいや増す。
しかしその肝心の桂とは、会おうにも、おおむね町中の偶然に期待するしかないのが、現状だ。あとは、潜伏場所か活動場所の手がかりを得て、無駄を覚悟で張るしかない。しかも沖田が望むのは、一対一の対決だ。
だから、その報告に沖田は内心で小躍りした。
監査方の山崎がつかんだ情報を、もっともらしい理由を並べ立て、半ば脅して他には口止めをし、沖田は翌日早々にその場所へと向かった。
攘夷派幹部の会合があるという、江戸から少し離れた難所・権太坂手前の保土ヶ谷の宿。あいにく非番ではなかったが、沖田のさぼりはいまに始まったことではないし、咎め立てするような命知らずもいない。もっとも一番隊の隊士たちも心得たもので、肝心なときにだれよりつよい身方でさえあれば、沖田の存在意義は成り立つと思っているふしがある。
ほかの攘夷派幹部になど沖田はなんの関心もなかったが、仮に桂を逃してもそっちを捕らえれば近藤の顔は立つ、などと都合の良いいいわけを考えて、足を速めた。
保土ヶ谷の宿は、かつて難所を越えるまえの英気を養う休息地として栄えた。天人の世となってからは坂越えなど楽々とすませられるようになったけれど、宿場はいまもそこそこに賑わっているようだ。
入ってすぐの大通りで、沖田は見慣れた後ろ姿をみつけて、がらにもなくどきりとした。黒の着流し。二本差し。めずらしく笠など被って。
「なんで、野郎がいるんでィ」
そういえば、朝屯所をでるときも姿を見なかった。また外泊かと思っていたのだが、ここまで遠出をしてきているところを見ると、非番だったのか。だがなぜここに。理由はすぐに思い当たった。沖田とおなじだ。桂がいるからだ。
山崎から先に聞き出していたのか、独自で調べ上げたのかはわからないが。ひょっとしたら、桂の居場所まで突きとめているのかもしれない。それならそれで手間が省けていいや、と、沖田はぎりぎりの距離をとってあとをつけた。
果たして。土方は大通りをひとつ入った道筋の神社の境内で、歩みを止めた。参道に立ち並んだ木々の本堂にほど近い一本にもたれ、笠を根元へ外し置き、煙草を銜えて一服する。
その木々のいずこからか、姿なく、声だけが降ってきた。沖田はよく聞こえる位置にまで躙り寄る。参道脇の土塀で区切られた一角に身を潜めた。
「どういう了見だ。芋侍」
まちがいない。桂の声だ。
「んなこたぁ、云わずともわかってんだろうが」
「おれは忙しい身なのだが」
「会合の場にまで押しかけようってんじゃねえんだ。こっちは非番だし、だいいちここはお江戸じゃねえ。管轄外だ。顔くらい、見せろや」
どうやら桂を、呼び出すことには成功しているらしい。いつのまに土方は桂とコンタクトをとれる手段までを得ていたのか。
「見せて、どうする」
焦れたらしい土方が、銜えていた煙草を木の幹に押し付け、揉み消した。
「追えと云ったのは、てめぇのほうじゃねぇか。だからこんなところにまで来たんだぜ。そっちだって応じたからには、まんざらその気がねえわけでもねぇんだろ」
「自惚れるなよ。会合まえに面倒を起こしたくないから来てやっただけだ」
「自惚れるだろうが。連絡手段にフリーのアドレス程度は教えてくれてるんだからよ」
かさり、木の葉のこすれる音だけがする。桂は現れない。それにしても土方のやつ、アドレスだって? そいつは近藤さんの領分じゃあねえのかィ?
「アドレス、変えよっかな…」
ぽつりと、だが妙にあどけない、笑いを含んだ声で桂が云った。
「おめぇな。いいかげんにしろよ。時間、あんまりねえんだろ。俺ぁな、ただ」
「ただ?」
「会いてぇんだよ。おめぇの顔が見てえんだ」
ちくしょう、わざわざ云わすんじゃねえよ。そう続けた土方に、沖田は思わず上げそうになった声を、かろうじて飲み込んだ。桂とのあいだになにかあったと推察してはいたが、この成り行きは正直想像を超える。
土方は見てくれが見てくれだから、真選組のなかでは断トツにもてる。もてるが、マヨ好きが禍してそれ以上にはあまり進展するふしがない。だからか、あれでいて存外、初心なんじゃないか。というのが、土方のあずかり知らぬところでの、隊士たち多くの認識だった。しかしまさか、まさか。
沖田も、桂の容姿が人並み外れたものだということは理解しているし、たしかに立っているだけなら佳人だろう。土方の好みは元来、はっきりものを云う芯のつよい清楚な美人のようだから、わからなくもないが。
と、そこまで考えて、沖田はあたまを振った。自分もずいぶん毒されている。だが沖田にとって重要なのは、その容姿より、あくまで桂の腕前であり、その威厳にも似たあのときの威圧感だった。あの腕と勝負したいし、あの威厳に踏み込んでめちゃめちゃに荒らしてやりたい。おのれのサドっ気を沖田は自覚していたから、ともかく、桂をかまい倒したくてしかたがないのだ。でなければ、わざわざこんなところまで、足を伸ばしたりはしなかったろう。
「桂」
もういちど、土方は呼びかけた。聞いたことのないような、脆さを秘めた声音だった。
「…たのむ」
沈黙が落ちた。
かさり、また葉音がして。土方の背後に、ふわり、人影が降り立った。土方の背が、わずかに固まる。ぎこちなく、振り向いた。至近に桂の顔があった。土方はみつめ、そのまま無言で抱きしめた。
「おい」
「だまっとけ」
「顔を見るだけではなかったのか」
「すむかよ。それで」
「話がちがうぞ、土方」
だが、その桂の声は穏やかだった。少なくとも、この位置までは土方はゆるされている。そんな印象を沖田は抱いた。
「ちがわねぇ。こうしたかった」
「ちがう。ひとりで来ると、云っていたではないか」
目顔で促されて、そちらを土方は見た。その光景に目を奪われていた沖田は、桂のことばが示す意味を察するのが遅れた。
土方の、纏う空気の色が変わった。沖田が潜む土塀のほうを睨める。
「だれだ。出てこい」
とっさに、沖田は判断に迷った。ここで姿を見せることは、あとあと土方を揶揄うのにプラスと出るだろうか。そしてなにより桂の目に、おのれの行動はどう映るだろう。
「来やがらねぇんなら、こっちから行くぜ」
無意識の動作で背後に桂を庇いながら、土方が鯉口を切る。
その本気を悟って、沖田は諸手を掲げて、進み出た。ここで衝突したところで、なんの益にもならない。土方が、ぽかんと口を開けるのが見えた。
続 2008.02.03.
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