正式タイトル「三五七訓までをはがきサイズにまとめてみた えりづら」
(2011.06.26.コタ誕2の無配ペーパーより再録)
その名のとおりエリザベス登場から357訓までを葉書大に収めた無謀企画(笑)
←こんな挿絵が付いてた
黒いもじゃあたまに連れられて艦に乗り、編み笠の副官に連れられてこの星に降り立った。おのれの目のまえに立つその黒髪長髪のおとこ。黒もじゃあたまの艦長は、おまんを預けるのはほりゃあほりゃあきれえなひとじゃ、とウザいくらいに道中繰り返した。だがおのれにとっての大事はこの地球人のもとで飼われこの星に居を定め課せられた責務を果たすことにある。対象の美醜などどうでもよかった。
いまだ攘夷志士だというそのおとこがこの国の民のためにと私欲を捨てていそしむ姿を、冷めた目でおのれは見る。どうあがいたところでこの国はいずれ我が蓮蓬のものとなる。おなじ天人でもただ支配欲に冒されただけの天導衆と母星を失ったおのれらは似て非なるものだ。どうせならわれらのものになったほうがまだしも慰めとなろう。
思想もなにもないものをどう嫌いになれというんだと本来は仇の地球外生物を懐に受け容れ、そんな思惑も知らずそのひとはおのれを愛おしんだ。あまつさえ、攘夷活動の一端までをもほいほいと任せてくる。むろんこのくらいのことは蓮蓬であるこの身には朝飯前だ。こんなおのれを信じるほうが莫迦だ。
真選組に追いかけられるのも日常茶飯事では、逃げる際の連係プレイも板についてくる。けしてひとりだけ安全圏に逃げようとはしないのだからやむを得ない。いまこのひとにいなくなられては、この身もまた困るだけだ。
おあげの取り合いで喧嘩もした。こんなこどもじみた真似を真面目にしているおのれに驚く。このひとはなんだってこうなんにでもまっすぐで、莫迦なかんちがいをして、指名手配の身を賭してまでこの身の救出に奔走したりするんだろう。
その折にも共闘したという天パの白銀髪に縋った、あの日。
あのひとはやっぱり命を賭して、隻眼の友を救いに馳せていた、その艦上。たとえ切っ先を突きつけてはいても、あのひとにとってはいまも仲間。護れるものなら全力で護りたいのだとその全身が語っていた。全員退却のその瞬間までその背を預け預けられながらの白銀髪と中空に舞う。この身を模した落下傘が眼下に広がった。莫迦だこんなところでまで、あのひとは。あのひとが心底愛おしむこの姿こそが、偽りと欺瞞の証しだというのに。
いつのまに全力でこの身はあのひとを探し求め、あのひとの不在に泣いた。あのときにはもう、この選択は決まっていたのだろう。あのひとのために。あのひとの友たるおのれであるために。たとえこの身が忘れ去られようとも。
黒もじゃの繰り返したことばをいま痛切におもう。この身の似姿をまとって剣を振るい、おのが眼前で闇を切り裂いたその姿に。あのひとは莫迦で。けれどほんとうに。
それはそれはきれいなひとなのだ。
了 2011.06.22.
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黒いもじゃあたまに連れられて艦に乗り、編み笠の副官に連れられてこの星に降り立った。おのれの目のまえに立つその黒髪長髪のおとこ。黒もじゃあたまの艦長は、おまんを預けるのはほりゃあほりゃあきれえなひとじゃ、とウザいくらいに道中繰り返した。だがおのれにとっての大事はこの地球人のもとで飼われこの星に居を定め課せられた責務を果たすことにある。対象の美醜などどうでもよかった。
いまだ攘夷志士だというそのおとこがこの国の民のためにと私欲を捨てていそしむ姿を、冷めた目でおのれは見る。どうあがいたところでこの国はいずれ我が蓮蓬のものとなる。おなじ天人でもただ支配欲に冒されただけの天導衆と母星を失ったおのれらは似て非なるものだ。どうせならわれらのものになったほうがまだしも慰めとなろう。
思想もなにもないものをどう嫌いになれというんだと本来は仇の地球外生物を懐に受け容れ、そんな思惑も知らずそのひとはおのれを愛おしんだ。あまつさえ、攘夷活動の一端までをもほいほいと任せてくる。むろんこのくらいのことは蓮蓬であるこの身には朝飯前だ。こんなおのれを信じるほうが莫迦だ。
真選組に追いかけられるのも日常茶飯事では、逃げる際の連係プレイも板についてくる。けしてひとりだけ安全圏に逃げようとはしないのだからやむを得ない。いまこのひとにいなくなられては、この身もまた困るだけだ。
おあげの取り合いで喧嘩もした。こんなこどもじみた真似を真面目にしているおのれに驚く。このひとはなんだってこうなんにでもまっすぐで、莫迦なかんちがいをして、指名手配の身を賭してまでこの身の救出に奔走したりするんだろう。
その折にも共闘したという天パの白銀髪に縋った、あの日。
あのひとはやっぱり命を賭して、隻眼の友を救いに馳せていた、その艦上。たとえ切っ先を突きつけてはいても、あのひとにとってはいまも仲間。護れるものなら全力で護りたいのだとその全身が語っていた。全員退却のその瞬間までその背を預け預けられながらの白銀髪と中空に舞う。この身を模した落下傘が眼下に広がった。莫迦だこんなところでまで、あのひとは。あのひとが心底愛おしむこの姿こそが、偽りと欺瞞の証しだというのに。
いつのまに全力でこの身はあのひとを探し求め、あのひとの不在に泣いた。あのときにはもう、この選択は決まっていたのだろう。あのひとのために。あのひとの友たるおのれであるために。たとえこの身が忘れ去られようとも。
黒もじゃの繰り返したことばをいま痛切におもう。この身の似姿をまとって剣を振るい、おのが眼前で闇を切り裂いたその姿に。あのひとは莫迦で。けれどほんとうに。
それはそれはきれいなひとなのだ。
了 2011.06.22.
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